政策提案等の農政活動
本県農業の現状や課題を踏まえた農地利用の最適化について行政機関等へ意見を提出するとともに、全国組織との連携のもと、政策提案や税制改正対策、組織対策などの要請活動に取り組んでいます。
県への政策提案の実施
県知事への意見書の提出
埼玉県内の農業委員会や農業経営者の意見・要望等を踏まえ「農業委員会等に関する法律」第53条に基づき、令和8年度県農地等利用最適化の推進施策に関する意見書を取りまとめ、令和7年9月3日に埼玉県知事に提出しました。
令和8年度 県農地等利用最適化の推進施策に関する意見書【PDF171KB】
意見の内容
はじめに
現在、令和8年度を目標とする『埼玉県5か年計画』に基づき、県とともに関係機関・団体が一体となり、農業振興対策に全力で取り組んでいるところです。
そのような中、『食料安全保障の確保』、『環境と調和のとれた食料システムの確立』、『多面的機能の発揮』、『農業の持続的な発展』、『農村の振興』の五つの基本理念とした食料・農業・農村基本法が令和6年5月に改正され、その施策の方向性を具体化した新たな食料・農業・農村基本計画が令和7年4月に閣議決定されました。そして、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めることされました。農業構造への転換に向け、地域計画を核として取り組むことが示され、併せて、優良農地の確保や担い手の育成などもこれまで以上に取組を強化することが重要となっています。
我々農業委員会組織は、「かけがえのない農地と担い手を守り、力強い農業をつくる架け橋」という組織理念のもと、農業委員・農地利用最適化推進委員を中心として地域の農業振興活動を行い、優良農地の確保、担い手への農地集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入者の育成確保などに一定の成果をあげて参りました。しかし、本県の農業を着実に振興し、農業者が真に望む農業振興を推進するためには、未だ多くの課題がある状況です。
この度、県内農業委員会や農業者の意見・要望を踏まえ「農業委員会等に関する法律」第53条に基づき、令和8年度県農地等利用最適化の推進施策に関する意見書を取りまとめましたので提出いたします。
1農地利用の最適化の推進支援
(1)地域計画達成に向けた支援の強化
地域計画の達成に向け、令和8年度に大きく前進させるために、令和7年度中の進捗状況を踏まえた地域の今後の推進の方向性について、県として市町村に対して積極的に助言を行い、令和8年度当初から計画達成のためのフォローアップを行うこと。
(2)地域計画の将来受け手のいない農地への新規参入支援
地域計画において受け手が確定していない農地の利用促進を図るためには、新たな担い手の確保が重要となる。そのため、就農希望者や参入希望法人を募るため、県として市町村が参加する相談会を開催すること。あわせて、後継者のいない高齢農業者の経営継承についても、県として積極的な活動を行うこと。
(3)地域計画の目標地図の目的別団地化の推進
地域計画の目標地図において、担い手が位置付けられていない地区は、新規参入エリアや環境保全型農業推進エリアなどその地域の農業振興を考えた団地を形成できるように、協議の場などにおいて、市町村と連携して推進を図ること。
(4)農地管理団体の確保と活用の周知
高齢者や不在地主などの農地について、耕作者が見つかるまでの間、耕耘等保全管理が可能なサービス事業体の掘り起こしを進めるとともに、地権者や関係機関等が簡便に利用できる仕組みをつくること。
(5)地域計画内の農地転用の取扱いの厳格化
地域計画とは農業振興を行うために市町村として設定したエリアである。そのエリアにおいて、農地転用が行われる場合は、必ず、地域計画への影響の有無について、多角的な確認を行った上で、許可を行うように改めて周知徹底を図り、農業経営基盤強化促進法の基本要綱の地域計画の取扱いで明記されている農外利用の場合は、転用申請前に地域計画を変更する旨を徹底すること。
(6)農業インフラの整備のための予算確保
農産物の生産の基盤となる水利施設や農道など農業インフラの整備予算と、老朽施設の補修等の予算を拡充するよう国に要請するとともに県としてしっかり予算確保すること。
(7)農地中間管理機能の効能発揮のための支援強化
遊休農地を発生させないための農地の保全・管理や、農地貸付けのための基盤整備・団地化の造成、相続に伴う農地所有者の不在村化の対応など、今後の農業振興を図るうえで農地中間管理事業の中間管理機能を十分に発揮させることが必要不可欠である。そのため、農地の中間管理機能をこれまで以上に活用できるように管理に必要な費用の支援について国に要請すること。
(8)生産基盤整備の推進と予算の充実確保
基盤整備に関係する予算については、今後の農業振興には必要不可欠となってくるため、予算措置について強力に要請し、県として積極的に確保すること。あわせて、調査に時間がかかり、機会を逸することが無いように、これまで以上に地域における推進を強化するとともに、着工までの期間を短縮できる仕組みを構築すること。
(9)営農型太陽光発電施設の適正な運用
営農型太陽光発電施設の許可にあたって、下部の農地全体において適切に営農を行うことが絶対条件であるが、営農が適正に行われていない事例が散見される。そこで、営農型太陽光発電の転用許可を行う際は、栽培密度や植栽間隔、排水性を含め、下部の営農が適正に行われるかどうか、厳格に審査すること。併せて、定期報告において、営農の適切な継続が行われていない場合は、必要な改善指導を行うとともに、営農が行われない場合は、営農型太陽光発電施設の撤去を指導するなど適正な措置を徹底すること。
(10)営農型太陽光発電施設期間終了後の農地利用の担保の徹底
営農型太陽光発電施設については、一時転用期間の終了(許可取り消しを含む)後は、農地に復元して農地利用を行うことになっており、その担保として許可時に撤去費用の確認を行うことになっている。しかし、一時転用期間中に撤去費用を取り崩す可能性もあるため、定期報告時に残高の確認を行う措置を導入するか、供託制度を利用するなど撤去費用の確実な保持が図られるよう制度改正を国に要請すること。
(11)遊休農地の解消支援
地域計画内の遊休農地を耕作者自らが解消する場合に、耕作者に解消費用の助成措置が講じられるよう国に要請すること。
2 農業を支える経営体への支援
(1)農業生産を行える価格形成の徹底
「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律」及び「卸売市場法の一部改正」が令和7 年6 月18 日に公布され、今後、合理的な価格形成の実現に向けて、コスト指標の作成が進められている。制度運用にあたり、生産者も消費者も納得できることが望ましいため、本法律の内容を農業者、事業者のみならず消費者にも広く周知するなど本制度の活用について県としても積極的な支援を行うこと。
(2)スマート農業利活用の推進
スマート農業は、農業就業人口従事者が減少する中で、少人数でも食料を安定的に供給できる体制を整備する上で、極めて重要な技術である。しかし、スマート農業を実施するためには、初期投資が高額になるため、機械導入に関する支援を更に充実・強化すること。また、スマート農業の利点を最大限活用できるよう、大区画化、汎用化などの取り組みを一層推進するとともに、それに伴う通信基盤の整備などについても支援を行うこと。
(3)農業者と開発供給事業者とのマッチングの活性化
農業従事者が減少する中において、スマート農業技術の開発・普及は、農作業のより一層の効率化を図るうえで極めて重要である。そこで、農業者が考える農作業等の中で開発してほしい様々なスマート農業技術(簡易なものも含む)について、開発供給事業者とのマッチングが行えるよう支援すること。
(4)肥料・資材等の高騰対策の継続支援
生産資材や肥料・燃料等の価格は今後も高止まりが続くものと懸念される。このため、安定的な農業経営が継続できるよう、肥料や資材等の高騰対策が継続的に実施されるよう国に要請すること。
(5)イネカメムシ対策の継続支援
イネカメムシ広域防除緊急対策事業補助金を令和7年度は実施しているが、令和8年度も継続して実施すること。
(6)都市農業の振興
都市農業は、農産物の供給のほかにも、防災、景観形成、農業体験などの学習・交流の場を通じた農業理解の醸成といった重要な役割をもっている。このため、県都市農業振興計画に基づき都市部の担い手の確保等の支援策を充実させること。
3 農業委員会等組織への支援
(1)農地の利用調整活動の支援の拡充
農業委員会において、今後は特に、地域計画の達成のための利用調整に向けて現場の農業委員・農地利用最適化推進委員が所有者・利用者の意向把握を綿密に行い、その情報をしっかり整備することが必要となる。そこで、その活動経費として農地利用最適化交付金を有効活用するため「活用できる事務費の拡充」等についての要綱改正を国に要請すること。
(2)遊休農地措置の簡素化
地域計画内の遊休農地については、計画達成のために市町村や関係機関が農地所有者に利用意向調査を行い、今後の利用意向が把握できている場合は、農業委員会が実施する遊休農地所有者等への利用意向調査を実施したものと見なすように制度改正を国に働きかけること。
(3)農地の権利移動の適正な判断根拠の整備
多様な農地利用を検討する他産業の企業の農業参入希望が多くなっている。しかし、参入に当たっては、地域と協調してしっかり農業を行うかどうか不安が生じるケースもある。そこで、企業の農地権利取得に際しての判断基準として、農業技術などが明確に判断を行える基準や数年農地利用して農地転用を行うなどをしっかり防止できる基準を整備するように国に要請すること。
(4)農地を適正に管理するための地目変更の推進
公共転用された土地について、農業委員会では把握できず、登記の地目変更がされていない場合は、農地台帳の管理に支障を及ぼすことがある。そこで、今後の農地の適正な管理や農地の流動化の推進などを効率的に行うために、県で道路等とした土地について、登記状況の再点検を行い、地目変更等を行うこと。
(5)農地利用最適化活動のためのタブレット予算の確保
農業委員会へのタブレット導入により、農地利用最適化業務の効率的な運用がされている。しかし、導入したタブレットについて耐用年数を迎えているが、予算上、新たなタブレットを導入することが困難な市町村も多くある。そこで、農業委員等が活用するためのタブレット導入経費若しくはタブレットリース料について助成措置を講ずるように国に要請すること。
(6)農業委員会サポートシステムの利活用の推進と県の農地情報収集における利用促進
農業委員会サポートシステムの利活用を進めるためには、専門的・技術的な支援も必要となることから、サポートシステム事業体が現場に出向き支援を行うなど支援の充実が図られるよう国に要請すること。また、農業委員会サポートシステムは県も利用できることから、県が実施する各種調査において、サポートシステムの機能活用できるものは、農業委員会からデータを提出してもらうのではなく、システムに保存されている情報をもとに整理する体制の構築について検討をすること。
(7)(一社)農業会議活動予算の確保・拡充
(一社)埼玉県農業会議は、農業委員会の支援として、農地制度理解促進のための研修会の開催や相談対応などを実施している。しかし、近年、農業委員会サポートシステムやそれに関連する多様な取組、所有者不明農地対策の推進、地域計画の達成に資する農業委員会活動の展開支援などこれまで以上の取組が行われる中、多様な業務を展開することとなっている。農業委員会業務支援などを適正に行うための農業会議の運営に係る経費補助の拡充を行うとともに、国に対して運営費の拡充を行うよう要請すること。
4 営農環境の整備と県民の農業理解の促進
(1)環境保全型農業の推進
埼玉県における環境保全型農業直接支払制度の実施面積は、令和5年度実績で24市町237haとなっており、令和9年度目標の354haを実現させるため、市町村だけでなく県としても地域計画の話し合いなどの場を利用し、環境保全型農業の意義等を再度周知徹底し、取組を推進するとともに、実施者や実施希望者への技術的サポートを強化すること。
(2)県内全域における鳥獣害対策の強化
鳥獣被害については、中山間地域のみではなく、平場や都市部においても懸念される状況となっている。そこで、関係支援策について、これまで以上に周知徹底を図るとともに、広域的で効率・効果的な対策が講じられるように支援を充実すること。あわせて、猟銃の使用者の高齢化など、鳥獣の駆除を行える者の不足により、対応ができないことも増えていることから、駆除を行う担い手の確保のための支援の充実を図るよう国に要請すること。
(3)農業理解の促進
本県農業の持続的な発展を図るためには、県民に対して農業の必要性・重要性について理解を深めてもらうことが重要である。このため、本県農業が県民に対して果たしている役割について、しっかり県民に理解してもらう機会をさらに設けて理解促進に務めるとともに、農業のもつ多面的な機能についても、これまで以上に理解してもらうよう務めること。